ブログ小説                社会保険労務士 竹ノ内由美の啖呵

有限責任事業組合 KUMAXの5人の社会保険労務士が「熱い正義感」で社会の不正に立ち向かう。 メンバーの竹ノ内由美が最後に放つ啖呵が小気味いいブログ小説。

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過労自殺なんて許さない 第17回

由美は止めってあった車に乗ると、携帯を取り出し話し始めた。
「あっ、カトチャン。悪いんだけど越智さんの会社での友だちって知ってる?
カトチャンが日勤の時、越智さんを見たことあるの?食堂でよく見た。
それで、越智さん誰かと一緒にご飯食べてなかった?
同じ課の山本さんて言うのね。ありがとう。
カトちゃんさあ、山本さんに連絡できないかなあ。えっ?カトチャンが私に事務所に行くように山本さんに言ってくれるの?
うれしい!もーっ、今日はカトチャン、ペッじゃなくてカトチャン、チュしてあげる。チュ」
そう言って携帯にキスをすると、車を発進させた。

2日後の夕方、作業服を着た男の人が事務所に入ってきた。
作業服の胸には川電製作所のマークが入っていたので、由美にはこの人が山本さんだとすぐにわかった。
山本の年齢は35歳くらいだろうか、きちんと7:3に分けた髪とまじめそうな目をしている。
「昨日、アントニオから話しを聞きました。私に会社での越智さんの様子を病院の先生に話してくれと言われたんですけど、僕でなければいけないでしょうか?」
「山本さん、これ越智さんのお嬢さんの優美さんのノートなんです。
単身赴任すると言った越智さんに優美さんと弟の優斗君が、パパと離れたくないと言って一緒にこの町に来たんですよ。
二人ともパパが大好きだったんですねえ」

山本さんは、そのノートを黙って読み続けていました。

そのノートにはこう書かれていた。
「4月1日 パパは張り切って会社に行った。私も優斗も新しい学校でたくさんお友達をつくることをパパと約束した。」

「ゴールデンウイークも会社に行ってパパがかわいそう。休めないのかなあ。」

「5月8日 今日からパパが帰ってきた時間をママに聞いて書いておこう
 後でパパにこんなに遅くまで働いたら病気になるよって言うために」
「9月10日 パパが帰ってきた時間 2時40分。朝も私と優斗が起きる時間にパパは仕事に行っちゃうので、ずっとパパの顔を見てない。パパ大丈夫かなあ」

「10月9日 パパの時間3時30分。今日は私と優斗の運動会。会社に行ったパパがお昼に学校に来てくれた。一緒におにぎりを食べれてうれしかった。優斗はおにぎりを3つも食べたけど、パパは1つしか食べなかった。パパいっぱいご飯食べなきゃ、ダメよ」

「12月1日 今日もパパは遅くまでお仕事で帰って来なかった。
もうすぐクリスマスだから、みんないっしょにケーキを食べたいな。
サンタさんにはお願いするプレゼントはパパといっしょにディズニーランドに行けますようにとお願いしよう。」

「今日はクリスマスだ。パパ早く帰ってくるかなあ」

今年の1月から1日も欠かさず書かれたノートは、この日で終わっていた。12月24日は越智が亡くなった日だ。

読み終えた山本の目からポロポロと涙が落ちた。
「先生、私の長男が越智さんの優斗君と同級生でしてね。私も週に何回かは帰る頃には息子が寝ています。どんなに遅く帰っても、その寝顔を見るとがんばらなきゃって思うんですよ。これを読ませてもらって、始めて気が付きました。頑張ってるのは息子なんだって。
先生、私もしがないサラリーマンです。会社に不利なことをしたら、会社にいられなくなるかもしれません。そうしたら、家族を泣かせてしまいます。
だから、お願いがあるんです。
私が病院の先生にしゃべったということが、会社にわからないようにして下さい。
そうしていただければ、越智さんが毎日遅くまで仕事をしていたことや、組合の委員として苦労していたかを、お話ししたいと思います」
「わかりました。林先生にはそのように伝えますし、私も絶対に山本さんのお名前を表に出しません」
「ありがとうございます。でも何だか、かっこ悪いですね。息子におとうさんは優斗君のためにがんばったよって胸を張って言えないですね」
「そんなことありませんよ。山本さんかっこいいですよ」

次回へ続く


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由美そういうと山本は照れたように頭をかいた。

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